2021年7月22日木曜日

『Bike in the sky』#243 ありがとうございました。

コロナ禍において、いよいよ東京オリンピックが始まります。

このオリンピックに関しまして世論は「開催の是非」で違う意味の賑わいをみせております。 

果たして開催後は良かったのか拙かったのか・・・

どちらにしても安全に無事終わることを願いたいと思います。

そんな大イベントとは比較になりませんが当T-PADDOCKでも、このひと月は大イベントでワクワク、ドキドキの日々を過ごしておりました。

そのドキドキの方で先週号では「セロー復活プロジェクト」が「試練です!」で終わりました。

しかし、その翌日には試練の原因不明のトラブルを何とか解決?できたようです。

「試練です!」と思った時は・・・

「仕事受けたものの、ほんまに直せるんかい?」と、その晩は寝付けずでした。

でも翌朝、天の声が「たぶん、あそこをチェックしてみろ!」と聞こえたような気がしました。

お陰で予定通りセローの引取りは完了し「セロー復活プロジェクト」は終了しました。

先週の土曜日、引取りに来られたオーナーのOka〇さんです。

T-PADDOCKに到着して、まず近場を試乗して頂きました。

結果、上の画像がまずまずの出来に喜んで頂き、試乗から戻って来られた時のワンショットです。

当日は同じセローに乗るShi〇さんに乗っけてもらっての引取り!
そして、その後セローやオフロードでの走り方教室?もどきになり・・・

Shi〇さんからセローのメンテの手ほどきを受けられます。
真剣にレクチャーを受けられる様子!

ですが、そもそも先週の「試練」を乗り越えた説明を先にしなくてはなりません。

ブリーザーホース右の「プッシュレバー」という、ワイヤーで引っ張られ1/4回転ほどしてクラッチを切る金具が全く動かない。

で、終わったのですがパーツリストを見る限りトラブルは電気系とは全く検討違いの、やはりクラッチに関わる機会的な所では?

パーツリストを見る限りクラッチ周りの構造は昔ながらのシンプルなモノ!

「ならば私でも直せるだろう」で右側のクラッチ板が収まるクランクカバーを開けることにしました。
開けると当然、エンジンオイルがザーッと流れ出します。

よってオイルトレイの上に細目のネットを被せてパーツ等の脱落があっても即座に発見できるようにします。
そして、クラッチプレートも外しにかかったところで・・・
上の画像左端のオイルが溜まったトレイの網に引っ掛かった異物を発見!
これが原因かどうかはわかりませんが、クラッチプレートを左側から押すプッシュロッドの先端から出てきた異物!

その他はオイルの中を探るも金属の削りカスのようなモノで、よくある廃油に混ざる金属粉とは明らかに別物!

この段階でクラッチレバーを握ると、なんとスムーズに軽く握れます。

と言うことは、クラッチレバーが握れない原因はプッシュロッドより先にあるとなります。

そしてここでパーツリストを再度見ますとプッシュロッドの先にはボールベアリングにみるような「ボール」なるパーツが表記されております。

ですが、外したここまでの段階ではそのボールは見当たりません。

ならば、車体を右に傾けクラッチプレートを押すプッシュロッドが収まる円筒形のど真ん中の穴からボールが転げて出てくるのではと・・・

ですが真ん中の穴からは全く何も出てこず!

車体を垂直に戻しペンシルライトで穴の中を覗き込みます。

そして覗きながらクラッチレバーを握るとプッシュロッドが数ミリ?レベルで動く様子だけが見て取れます。

ここで「ボールがない!」ということが判明!

「ボールが破壊した?」

「その破壊したボールの破片が先ほどの金属片なのか?」

と疑惑は増すばかり!

そこでT-PADDOCK内にあるボールを探すもハンドルステムに使うボールレース型のベアリングボールしかありません。

しかし、そのボールの在庫も直径をノギスで測るも4.5mm程度が最大!

一先ず、プッシュロッドが収まる穴にそのボールを入れプレートも全て組み込んでクラッチレバーを握ります!

7枚のクラッチプレートは開きました。

思わず「よっしゃ~!」と声を上げましたがクラッチレバーを完全に握ってチェンジを入れ後輪が回るかを確認します。

結果はクラッチプレートが完全には切れきれていません。

と言うことはボールの直径が小さいという結論になります。

ではボールの直径が何mm必要なのかになりますので穴の直径を測ると凡そ8.5~9mm程度。

ならば、そのボールの代替品を造るしかない!

それは
画像の上に映るのがハンドルステム用のボールとレースで、そんな感じの8mmぐらいのボールに近いパーツは画像下の8mmボルトの頭下のネジを切っていない綺麗な部分だけをカットして使います。

それをプッシュロッドの先に入れクラッチプレートをハメてレバーを握ってキチっと切れるまで何度も何度もボルトからカットした手作りパーツをグラインダー削っては組み、削っては組みを繰り返します。

話しは少し逸脱しますが実はこれに近い現象は今から約25年前にT-PADDOCK630の「YAMAHA XS1」のレストアした時にもありました。
上の画像真ん中にあるシルバーメッキのドレンプラグのようなキャップが映っていますが当時、このXSを手に入れた時はクランクケースのこのキャップは無くなってありませんでした。

当時、貴重なパーツリストを入手し、このクランクケースのキャップ内部の構造を示すイラストを観るとチェンジをさせるシフターだったかな?みたいな先にボールがあって、そこに確かスプリングがありカチカチっとシフトできるような構造だったように記憶が蘇りました。

しかしその時は、そのボールを入手する術もありませんでしたの今回同様、自作をしたのを思い出した次第なのです。

話しを本線に戻します。

そして削っては組みを4,5回目ぐらいで「まぁこの辺かな・・・」というポイントが出ました。

そして組み直してT-PADDOCK前を試乗!

なんか行けそうな雰囲気ですので保安部品もキチっと付け本テスト!

新石切まで行き、そこから外環状線まで出て阪奈道路上りから阪奈頂上まで行って引き返しT-PADDOCKまでの約10kmぐらいを無事完走!

インプレッションとしてはチェンジアップは問題ないのですがダウンでは低速ギアで入り難くい時がありニュートラルもやや出難いレベル。

でも走る点では問題ありませんので一先ずオーナーさんに乗って頂き「今回のトラブルの原因がボール」だと結論付けられれば部品を取り寄せることにしました。

という経緯があって先週、土曜日に引取りで来て頂いたのですが私が全くのノーマークな所が「折れてますよ!」とShi〇さんからご指摘。

オフロードで転倒した時用のフロントフォークへのダメージをカバーするプロテクターバーなるパーツの根元が折れておりました。
まぁ、このレベルであればT-PADDOCKでも溶接は可能!
といことで溶接にかかります。
(撮影者はShi〇さん。)
そして溶接したところを・・・
グライダーで軽く削ります。(撮影者はShi〇さん。)

そして今回の注意点の説明をしっかりオーナー様に伝授しました。
(撮影者はShi〇さん。)

そしてT-PADDOCKから無事にご帰還!
長いような短いような、ひと月でしたが大変楽しませてもらいました。

そしてOka〇さんの奥様からは過分なプレゼントと心温まるお手紙も頂戴して恐悦至極に存じます。

その一文をご紹介させていただきますと

「青春を一緒に過ごしたバイクなのでずっと手離すことができませんでした。またセローのエンジン音が聞けるとは思っておらず大変嬉しく思っています。」

ほんまにエエ仕事をさせて頂きました。こちらこそありがとうございました。

と、奥さんが乗るのかと思いきや・・・
明くる日の日曜の月ヶ瀬に旦那様が早速のお出まし。

そして、その帰りには・・・
なんのなんの、旦那が山に遊びに行っとるがな・・・

こっちにしたら、まだ慣らし運転をして欲しいところなので・・・まぁエエのですけど・・・

あとは、ひと月後か500kmぐらいの走行後、オイル交換と同時に例の「ボール」を純正部品に交換して終了です。

ありがとうございました。
T-PADDOCK630 T/Tatsumi

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